日本三大民宿と言われていた能登半島の「郷土料理️ さんなみ(以下さんなみ)」に泊まることが出来ないまま宿が廃業してしまったことは、私が人生で後悔していることの一つです。年々その後悔は大きくなる一方で「さんなみ」の情報が載っていた雑誌の記事を探したり、どんな宿でどんな食事だったのだろうと想像したりしていました。
今回の宿「能登イタリアンの宿ふらっと(以下ふらっと)」は、1997年に別の場所で民宿を始められた娘さんご夫婦が「さんなみ」の跡地を継いで経営されている民宿です。水平線の先に山の見える裏日本海に程近い場所にあり、入口の門は記事で見た「さんなみ」のまま。長く憧れていた場所に立ちとても感動しました。今回の予約は、離れ2部屋の和室で、今年3月にお風呂などの水まわりが新設されたので、部屋でゆっくりと過ごすことが出来ます。夕食は、オーストラリアでも料理人をされていたご主人ベンジャミン・フラットさんの創るイタリア料理。
漆の器にサワークリームの入った濃厚なパンプキンスープ、ふんわり蟹のような味がするのはいしる。いしるとは魚醤のことで、能登では醤油より歴史が古いものです。イシダイのカルパッチョはいくらの塩気と自家製の柚子の香りでいただきます。オレンジのようにも感じる甘めの柚子の皮でした。蛸の吸盤のみを使ったガーリックオクトパス、添えられたパンは宿の近くの人気店能登パンの物。レア目ですごく美味しかったアオリイカのソテー、自家製のニラソースと今回はレモンの味のように感じたので伺ったらやはり柚子、柚子は敷地内に20本ほど自生していて年間500キロも収穫がありフレッシュだからなのだそう。味の濃厚なブランド椎茸能登115とカブを煮詰めたソースでいただく鰤のステーキ。そしてなんと香箱蟹を一杯使用した手打ちパスタ、発酵粕で焼いたスズキのソテー、ブランマンジェと珈琲のコース。
移民の多いオーストラリアの人は対応力が高いそうで、国も文化の違いも乗り越えて確立した「能登イタリアン」は、他にはない味のオンパレードでした。
「さんなみ」を営んでいたご両親が廃業されたのはまだまだ元気な60歳くらいの時。今は長野へ移住されて楽しく暮らされているとのこと、きっと豊かな暮らしをされているのだろうな。
そんなご両親が1番継いで欲しいと思っていたのが伝統食で、ゲストに出す料理に真摯に向き合う所をご両親から1番学んだのだそうです。また米糠(こんか)鰯などの出る和食の朝食もご主人と2人で作りますが、朝食はほとんど「さんなみ」の料理と変わらないと言われて、子供の頃からの舌の記憶を持つ娘さんが引き継いだからこそだと少し後悔が和らぐのがわかりました。
伝統の物はなるべく伝統通りに、いかに次につなげるかという思いでやっているそうで、今まで自分の中で別々だった宿が一部重なったような感覚、「ふらっと」の豊かさ素晴らしかった、本当に泊まりに来て良かったと思いました。(2020年12月訪問)
旅館名 | 能登イタリアンの宿ふらっと |
住所 | 石川県鳳珠郡能登町矢波27-26-3 |
TEL | 0768-62-1900 |
お風呂 | 各部屋 |
予算 | 2人1室利用の場合、1人20,500円~(2食付) |
露天風呂付客室 | なし |