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こんなにユニークなロケーションにあるレストランは初めてでした。場所が辺鄙なだけではありません。山奥の秘境にあるお店は最近時々見かけますが、ここはちょっと普通と違います。まずお店の名前も普通ではありません。名前がないのが名前です。ノーネーム!
場所は鹿児島県、鶴の飛来地として知られる出水(いずみ)市。出水駅から車で20分位に位置する保養施設「ひかりの郷」の施設の一環として営業しているレストランだと言います。よってシェフもサービス係のスタッフも二人ともここの施設の職員さんなのです。
でも本格的で素晴らしいイタリアンが出されるのです。一体どんなお店なのか?謎は謎を呼び・・・2月の平日のランチに潜入しました。
保養施設の中にある別世界のイタリアン
「ひかりの郷」はどちらかというと老人ホーム的な施設で、温泉や宿泊施設もあります。大衆食堂やカジュアルなイタリアンのお店が暖簾1枚隔てた向こうにあります。食堂のおばさんたちの声が響き渡る環境で、こちらは別世界のエレガントなイタリアンレストランです。これ以上ユニークなシチュエーションは見たことがありません。
シェフは東京の名店「フィオッキ」で長年修業し、3年ほど前にこのお店をオープン。出水の地はとりわけ縁もゆかりもなかったそうですが、結婚して子供ができてからは田舎暮らしがいいと思い始めたそうです。
このお店に欠かせぬ存在が、2人体制でやっているサービス係とソムリエを兼ねた男性スタッフです。道案内の事前メールから始まって、明るい出迎え、料理の説明などとても気配り上手な方で、彼がいるお陰でシェフは料理に専念できるようです。
一皿目から魅了されたランチコース
ランチもディナーも同じコースで、7700円で9品のお任せです。テーブルに置かれているメニューには食材のみ記され、その横にシェフのサインも。
料理はどれもが最高に口に合うもので、理想的な味でした。適量で完食できたのも私には嬉しく、すべてが感動的な逸品でした。まさかこんなに辺鄙な地のお店でこれほどの料理が食べられるとは。驚きしかありませんでした。
まず最初は新玉葱とジャガイモのクリームスープ。味わうごとに幸せになるような丁寧に出来上がった美味しさです。
アオリイカと菜の花のサラダは、オリーブオイルと蒸してから炙っているイカと、菜の花やハーブ、トマト、スライスアーモンドを混ぜて、生の卵黄のマリネ、イタリアのカラスミがかけられ、美しいお花も飾って見た目も味も理想的な1皿です。
うんまか豚の美味しさにもびっくり
春を感じるリゾットはグリンピースでパルミジャーノとの相性は言わずもがな。
自分で作っている原木椎茸、育てている野生種のえのき、水耕栽培しているレタスにほうれん草のフランを合わせ、ほうれん草のローストした葉っぱを添えたものが出ました。かなり創作性を感じる料理ですが、シェフが自分で育てているというのにも驚かされます。
鰆のローストは小さなホタルイカとミニトマトのソースで、ケッパーも入ってジャガイモのチップも飾り、いろんな食感といろんな酸味が変化を生み出しています。
ここで短角牛のラグーソースのスパゲッティが出ました。パスタが出たのでイタリアンだと再認識しました。スパゲッティの茹で加減がこれも理想的です。
メインのお肉料理はうんまか豚の肩ロースのローストです。香ばしく焼き上げて時間をかけてローストしてあります。自分で作っているキャベツのローストや丸ごと焼いて自然の甘味がたっぷりの人参のペーストもよく合います。変なビーフを出すくらいならこれほど美味しいポークを出す方が数倍気が利いています。
キウィのソルベとジェラートの後は可愛いプチフールの数々が出ました。きのこの山を自作しているのも楽しい趣向です。
最初から最後まで満足なランチタイム。お店が遠すぎて、また来ます、と簡単に言えないのがとても残念でした。
レストラン名(ジャンル) | NO NAME ノーネーム (イタリアン/イタリア料理) |
住所 | 鹿児島県出水市高尾野町大久保5589−3 ひかりの郷内 |
TEL | 080-1760-9000 |
予算 | ランチもディナーもお任せコース 7700円 |
座席/個室有無 | 8席 個室なし |
予約の可否 | 完全予約制 |
まとめ
美味しくて楽しくて、大きな満足感と共にシェフたちと別れを告げた翌日、ショートメールにメッセージが届きました。「・・・・・シェフの料理をお楽しみいただけたでしょうか?残りの日程もどうぞお楽しみくださいませ!ノーネーム」
ここまで気配りをしてくれるお店が今まであったでしょうか?やはり私が大好きになったノーネームさんでした!こうしたおもてなしの気持ちにまた感動する私でした。
(2022年2月訪問)