この店のサービスの素晴らしさは店内に一歩足を踏み入れた瞬間にわかりました。黒服、白服のスタッフがたくさんで出迎えてくれるのです。そして格式あるアールヌーボー調のインテリアの中で、まず目に入ってきた大きなフラワーアレンジメントもとても華やかなものです。
古代ローマ時代、名立たる食通として知られ、フォアグラを世に広めたとも言われるアピシウス。その名を店名にしたというお店だけあって、料理もサービスもムードもすべてがその名にふさわしいものでした。1983年開業という歴史を持ち、常に日本のフランス料理を牽引してきた名店なのです。
アピシウスに来るからには有名なスペシャリテの前菜を食べなくちゃと思っていました。その名は「雲丹とキャビア、カリフラワーのムースとコンソメゼリー寄せ」。これを味わってみたかったけれど、ランチのコースに入っていないので、コースのアレンジができないか希望を言ってみました。するとあっさりOK。融通の利く対応の良さも一流店のサービスならでは。料金アップで私の前菜をこのスペシャリテに変更してもらったのでした。
メニューに「高橋徳男氏へのオマージュ」と書かれているように、このメニューは初代アピシウスのシェフ高橋徳男氏が生み出したもの。それを今なお代表的スペシャリテとして岩元シェフが引き継いでおられます。優しいカリフラワームースの中には北海道産の雲丹とイラン産のキャビアが忍ばせてあり、まわりを取り囲むビーフコンソメの深い味わいとよくマッチして、まさにここでしか味わえない逸品。グランメゾンの真骨頂なのでした。
メイン代わりに出してもらったもう一つの前菜はアピシウス伝統のガチョウのフォアグラのテリーヌ。さすがにいいフォアグラでブルゴーニュのピノノワールのワインとピッタリで最高の味。そしてデザートはワゴンで好きなだけというのもいいサービスです。
店内右奥のコーナーのテーブルに座っていた私たち。すぐ横の壁に飾られていた風景画が最初からとても気になって仕方がありませんでした。その色彩の鮮やかさに魅了されます。スタッフに聞いてみると、それはユトリロですとの返事。シャガールもありますよとのこと。最初はレプリカかと思ったのですが、実はすべて本物でアピシウスの所蔵画なのです。こんなすぐ手の届くところに名画が無造作に飾ってあるなんて。絵を楽しみに食事にやって来るゲストも多いそうです。まさに美食と美術の融合した空間。なんとも贅沢なグランメゾンなのでした。
(2020年9月訪問)
レストラン名アピシウス
ジャンル | フレンチ(フランス料理) |
住所 | 東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館 地下1階 |
TEL | 03-3214-1361 |
予算 | ランチ6000円から ディナー13000円から |
座席 | 60席 |
個室 | サロンあり |
予約の可否 | 予約可 |