後輩に熊鍋を食べたいと言われた時、どんな味でも試してみたい私なのにたじろいでしまい、断ったことがあります。
そんな苦手意識をあっさり覆すことになったのが徳山鮓という宿です。
寿司でも鮨でもなく「熟れ鮓」の一文字を使用した店名にこだわりを感じます。
ここ数年よく話題になる発酵という分野にはるか以前から取り組まれていて、琵琶湖の北側にある余呉湖に面した宿は決してアクセスがいい場所ではないのに全国から食通が集まるのです。
宿の入口で徳山鮓の暖簾を見ただけで期待が高まりました。
夜、食事をいただいたのは、落ち着いた造りの余呉湖を眺められる部屋で、余呉湖側の窓際に常連とわかるご夫婦、入口側に私達が座りました。
宿の方に勧めていただいた冨田酒造の七本槍のお酒を飲みながら、前菜から数品、山と湖で獲れたものを中心に独創的なお料理が続き、いよいよ熊鍋です。
冬眠を控えた一番脂肪を蓄えている熊の肉はほとんど白(脂)くて赤いところが少ししかありません。
さっぱりとした味噌仕立てで水菜とねぎが入っている洗練されたスープ。
おそるおそる食べてみると脂もたくさん浮いているのに見た目ほど脂っぽくなく、美味しいのです。
魚を塩と米飯で乳酸発酵して作られる鮒鮓も酸味と甘味のバランスがよく、今まで食べた鮒鮓の中で断トツの一番でした。
食事が進むにつれ、隣の席のご夫婦がカンテサンスやアサヒナガストロノームなど美味しいレストランの話題をされているのに気がついて、いろいろと教えていただきました。
帰りがけに、隣の席のご主人が、宿の方に朝食は眺めの良い窓際に座ったらいいと言って私たちに窓際の席を譲ってくれました。
これもこの宿の良い思い出で、こういうゆとりを学びたい、あの時はありがとうございました。(2019年12月訪問)
旅館名 | 徳山鮓 |
住所 | 滋賀県長浜市余呉町川並1408 |
TEL | 0749-86-4045 |
お風呂 | 各部屋ユニットバス、家族風呂(貸し切り 内湯、露天風呂) |
予算 | 33,000円~ |
露天風呂付客室 | なし |