近鉄奈良駅にある興福寺の南側、猿沢池のあたりは奈良町と言います。奈良町には、長い歴史の中で奈良町家という多くの人が快適に過ごすための工夫の詰まった家々がたくさん残されていて、主屋(しゅや)や中庭などで構成されています。そして軒下には「鹿よけ」という鋭い石が、建物を人や鹿などの動物から守るためらしく、なんとも奈良らしい名前です。
世界遺産元興寺を中心に、町屋を改装したお店などが点在していて、散策するととても楽しいエリアです。
今回伺った「粟ならまち店」は、大和野菜を作ることをライフワークとして研究している(NPO法人「清澄の村」)のオーナーご夫妻が、2002年に奈良県の清澄に作ったお店や農家レストラン清澄の里「粟」の姉妹店。140年ほどの奈良町家を改装したお店です。予約の時に以前伺った際に伝えた電話番号をちゃんと記録していてくれているようで、数年ぶりなのにリピーターであることをわかってくれて驚きました。格子戸をくぐって細長い建物の土間を通り、1番奥の2階の席に案内されました。
今回は「大和と世界の野菜コース」4290円のディナーコースをいただきました。少しずつ入った前菜の籠盛りは毎回楽しみ。くみあげ湯葉ポン酢ジュレや筍の土佐煮など、一つ一つ繊細な味なので、いつもゆっくり味わって食べます。
大和まるなすや十津川しめじなどの入った季節野菜の天ぷら、季節野菜の炊き合わせには本葛のあんがかかっていてとても滋味深い。全て薄味で野菜の味がしっかり感じられます。ここに来ると何種類の野菜を食べたのか毎回わからなくなります。今日だけでいくつの大和野菜が食べられたのでしょうか。
ちなみに大和牛を選ぶコースもありますが、今回はあえて野菜のコース、メインも野菜の蒸し鍋でした。
締めは麦縄麺といううどんです。素麺製造者さんが作っているうどんです。豆乳の白味噌のお出汁につけて食べるつけ麺で提供されて、つるつるした食感で美味しい。
デザートはアスカルビーの苺とプリンを凍らせたカタラーナでした。
実は日本全国どこにでもある在来種の野菜ですが、有名な京野菜だけが在来種でないことを初めて教えてくれたのが、この「粟」でした。
戦後、食物をよりたくさん全国に均一に供給することが優先されたことと、日本中どこでも同じような企画の野菜が手に入るようになったことで、在来種の野菜は廃れていったのです。
でも在来種の野菜は見直され、ブランド化されてきたことで見事に復活しました。それは全国流通はしなくても在来種の野菜を無くさず作り続けてくれた多くの生産者さんのおかげと、食が観光資源となり地域の特色を出す格好の食材であったためです。
今、美味しい地方のレストランで在来種の野菜はたくさん食べることが出来ます。流行としてだけでなく、ほんとうに美味しい野菜達。そのことにいち早く気づいて実践した「粟」はやはりすごいと思うのです。
(2021年5月訪問)
レストラン名 | 粟ならまち店 |
ジャンル | 日本料理・郷土料理 |
住所 | 奈良県奈良市勝南院町1 |
TEL | 0742-24-5699 |
予算 | 昼 3,190円~ 夜4,290円~ |
座席 | 32席 |
個室 | 有り |
予約の可否 | 完全予約制 |