villa della pace 　オーベルジュ編　（七尾市/石川県）～能登の海辺の珠玉のオーベルジュ

この海沿いは国有地なのでこれ以上建物は建たないそう

能登七尾のvilla della paceは、2016年に七尾市でレストランを始めてから数年後、昨年2020年11月に元々は旧塩津海水浴場で海の家だった建物を改造して始められたレストラン棟と新築の別棟の宿泊棟があるオーベルジュです。
オーベルジュが好きなのは、オーナーの意図がダイレクトに感じられるところ。何にこだわって宿作りをされたのかに気づくのが毎回とても楽しみ。villa della paceは、美味しい料理はもちろん、寝心地の良いベッドや半分ガーゼのような肌触りの良いリネン、自然素材の歯ブラシなどたくさんの楽しい発見がありました。客室にもとてもこだわっていて、さらにとても快適に過ごすことが出来ました。

villa della paceのコンセプト

自然素材で造作された入口、壁には能登海の写真が

その場の環境を活かし、自分の料理の個性を打ち出すよりも、自分の個性を消して、能登を感じてもらいたい。使用する食材も95%以上が能登の物。素晴らしい食材を使用した美味しい物を食べてもらいたい、ゆっくり休んでもらいたいというコンセプトです。

ヒュスラー・ネストのベッドは通気性、寝心地共に最高

実際に平田さんの作られるイタリアンは、能登の季節を感じることが出来る一皿一皿でした。
イタリア語で平和を表すpace。滞在が終わって少し時間が経つとその意味がとてもよく分かります。

オーナーシェフについて

レストランの玄関入口、左側には椿の実が熟していた

オーナーシェフの平田明珠（ひらためいじゅ）氏は東京都練馬区で育ち、都内のレストランいくつかで修業をされた後、七尾市に移住しました。最初に勤めた練馬区大泉学園のイタリアンレストランdella Casa（残念ながら閉店）は、レストランで菜園を持っていたり、自家製の生ハムを作ったりと当時都内では珍しい形態のレストランだったそうで、生産地の近い場所に来るきっかけの一つだったのではと話されていました。

輪島塗の作家赤木明登氏の朱の漆器に映えるサルナシ

以前調べる機会があったのですが、まだ東京が江戸だった頃は東京のエリアは、もっと狭く練馬区や板橋区は、今のように冷蔵技術のない時代に江戸へ供給する食材を育てる重要な拠点でした。なので未だに畑や菜園を多く見ることが出来るエリアですが、やはり限りがあります。平田シェフがより生産地に近い所に惹かれた理由は、東京都在住の私にはとても理解が出来ます。

パーチェの夕食

栗の粉を使った自然の甘味の感じられるラザニア

夕食は、少し暗めにライティングしている店内でいただきます。席にあるメニューに食材が書かれていて、裏にも文字があったのでよく見たら取引先の生産者の方々の名前がずらりと書いてありました。こういうメニュー表、実は初めてです。
コースは、蕎麦がきと椎茸のスープから始まりました。3種のアミューズに続き、3日間寝かせたアオリイカを豚の生ハムと共に同じ厚さにそぎ切りにして作った冷前菜。文旦の香りと玉ねぎの甘酸っぱいソース。畑で取れる岡わかめの花が散らされていて見た目もとても綺麗。酸味のある前菜は食欲を増進します。温前菜は、真菰竹をオープンで焼いて皮を剥いてローストしたもの。パプリカを使ったソースにはゆう南蛮（かんずりのような）が入っていて少しだけぴり辛でとても良く合っています。

見た目も美しい無花果と胡麻団子のデザート

最初に食材を見せていただいた松茸　ほうき茸　しめじを使用したアーリオ・オーリオ。続いては、鴨と猪と鹿を使ったボロネーゼとベシャメルソースのつなぎに小麦粉と栗粉が入っている少し甘めのラザニア。絶対に自分では作れない美味しさです。メニューにある「畑」は、実際に畑にあるものをそのまま30種類程度、味付けはシンプルに、それぞれ調理法を変えた美しい一皿でした。次は魚料理、1週間くらい寝かし鰆を炭火焼きにしたものですが、平田シェフの魚の火入れはとても好みでした。火を入れすぎない魚は欧米の人にも食べてもらいたい。この繊細な調理は魚を知り尽くしてるからこそ出来るものだと思います。肉料理は、ブーブーファームの自然豚を使用した料理でした。デザートは2品、キウイの原種と言われているサルナシと手作りヨーグルト。また無花果の香りを移した（ほんとに無花果の香りが移ってる）ミルクに入った無花果と黒ごま団子。能登の今の時期を存分に楽しめるコースでした。

パーチェの朝食

レストランの窓からは七尾湾と能登島が見える

朝食は宿泊したゲスト限定のお楽しみです。
曇りなのに、昨夜とはうってかわって光が入る店内でいただきます。
洋食の朝食は、一品一品のグレードが最大限にあげられています。テーブルに置かれていたのは、自家製のジャム（ブルーベリー・すもも・スイカ・無花果）とセイズファームの蜂蜜。輪島の人気店「月とピエロ」のパンと、そのパンに合うという理由で使っている珍しく県外のバター。

オーナーの想いを感じるシンプルだけど豪華な朝ごはん

ミネストローネ、完璧な半熟卵、生クリームを使用した口当たりの柔らかい手作りヨーグルト。さらに茄子のペーストの上に、昨日の夜に食べた物と同じ豚肉のミニハンバーグやミニトマトを使用したカプレーゼなどが付いた豪華版の朝食でした。

まとめと宿データ

この環境はずっと変わらないでほしい

1日滞在しただけでも、この静寂の雰囲気が無くならないで欲しいと願うくらい素敵な場所でした。鎮静効果のある空間というのでしょうか。
おかげさまでゆっくりすることが出来ました。
なんとなく応援したくなるオーナーご夫妻、最近、チャレンジをする人がどんどん年下の方になっていることを感じます。新たな地で作る料理もどんどんブラッシュアップされそう。季節を変えてまたぜひ行きたいと思えるオーベルジュが見つかりました。(2021年10月訪問）

アミューズのひと口目から魅了される