福井県出身の私が、もしこれを読んでいる皆さんが来福されたなら是非食べて欲しい、と思う郷土料理は2つあります。それは越前そばとソースカツ丼です。
越前そばに関して名店と呼ばれるお店や好みによって紹介したいお店は迷うところなのですが、ソースカツ丼については「ここしかない!」と福井県民が100%太鼓判を押すお店があります。それは「ヨーロッパ軒」です。
カツ丼の起源には諸説ありますが、ヨーロッパ軒の創業者である高畠増太郎氏が考案したとされる説は有力なものの1つです。
遅くとも大正2年(1913年)には、福井県出身の高畠氏が料理研究留学先のドイツから帰国後、東京の鶴巻町、早稲田大学前に店を構え、ソースカツ丼を売り出していたという学生の証言があります。当時としてはハイカラな「ヨーロッパ軒」という屋号はヨーロッパで修業したことに由来しています。
その高畠氏が大正12年(1923年)の関東大震災を機に、福井に帰郷し始めたのが現在のヨーロッパ軒なのです。
ヨーロッパ軒の影響のためか、福井県ではカツ丼と言えばソースカツ丼が定着しています。例えば地元のショッピングセンターや駅前の食堂で「カツ丼」を注文すると「ソースカツ丼」が出てきます。
私がソースカツ丼ではない、卵とじのカツ丼を知ったのはおそらく小学生低学年の時、地元のエスカルゴというファミレスです。そこのメニューには「カツ丼(ソース)」「カツ丼(卵)」の2種類がありました。
そのファミレスでは私はいつも「カツ丼(ソース)」を頼むのですが、ある時「カツ丼(卵)」を食べてみたくなりました。「カツ丼(ソース)」が美味いのですから、「カツ丼(卵)」が美味しくないわけがありません。しかし結論から言うと「(ソースと比べて)特段美味しい訳でもないのになんでわざわざ卵でとじるんやろ」(←福井弁)と思って、卵とじのカツ丼は口にすることはありませんでした。
しかし大学入学を機に東京に来てみてビックリ。こちらではカツ丼と言えば卵とじでソースカツ丼のソの字も見当たらないのです。しかもショックだったのが、ソースカツ丼は福井などごく一部の地域でしか食べられていないマイナーな料理だと言う事実。
今では出汁の染みた卵とじのカツ丼美味しさも分かっているつもりですが、衣のサクサク感を無しにする卵とじのカツ丼によりも、やはりソースでサクっと食べる方を贔屓にしてしまいます。
改めて帰省の折にヨーロッパ軒を訪ねてみました。あいにく実家に一番近いお店はその日は休業中でしたので、次に近い花堂分店へ訪れました(ヨーロッパ軒は福井市の本店を中心に県内にのれん分けした20店近い分店が存在します)。
早速店内に入り、カツ丼をオーダー。
ヨーロッパ軒は洋食店ですが、昔から相変わらず水のほかにもお茶とお新香、味噌汁が付いてくるのがいいですね(笑)。
ヨーロッパ軒のカツの特徴は肉を薄く引き伸ばし、キメの細かいパン粉をまぶしている点。そのためカツ全体にウスターソースが程よく馴染んで、パリッパリッと歯ごたえ良く食べられます。カツ丼のお店によっては衣が硬くて口の中が痛くなることや、カツが厚くて噛み切れないことはありませんか?その点ヨーロッパ軒のカツはパリッとしながらも、衣に油臭さがなく、お肉も薄く柔らかいのでご飯がすすむのです。
それが老若男女あらゆる世代に長年愛されている秘訣なのかもしれませんね。
あくまで推測ですが、創業者の高畠増太郎氏はドイツに料理研究で留学していたことから、オーストリアやドイツで食べられている名物料理シュニッツェル(仔牛のカツレツ)にヒントを得たのではと思われます。当時日本で普及しはじめたウスターソースを全体に浸してご飯の上にのせ、丼にするというのは高畠氏流の日本風アレンジだったのかもしれませんね。
やはり久しぶりに訪れたヨーロッパ軒は昔と変わらないソースカツ丼の美味しさを今に伝える名店でした。
少しでもソースカツ丼の認知度が高まって東京でも美味しいソースカツ丼のお店が増えますように!!
(2020年12月訪問)
レストラン名 | ヨーロッパ軒 花堂分店 |
ジャンル | 丼もの、定食 |
住所 | 福井市西谷町1−1603 |
TEL | 0776-35-4500 |
予算 | ¥1000〜 |
座席 | 27席 |
個室 | なし |
予約の可否 | 可 |